一般就労しているようでも障がい者の方は通勤できなくなるというリスクも抱えています。
精神科病院へ入院するか救護施設に入るなどの方法もありますが、そうでない場合はグループホームで日中支援することになります。
休職中の日中支援など責任ある体制と覚悟も必要です。弊事業所はご利用者が数か月の休職中24時間体制で支援しました。日中サービス支援型への転換も検討したくらいです。
<日中サービス支援型について>
かといって安易な考えでの日中サービス支援型はお勧めしません。日中支援型は重度の方が多く入居するする可能性があり、なみなみならぬ強い覚悟の事業所でないと重度者支援できるスタッフを24時時間毎日確保(あるいは人手不足で特定のスタッフが犠牲になり)することは並大抵のことではなく安易にお勧め出来ません。
24時間支援する対象者は区分に関わらず事情があるわけですから、結果重度者を日中支援する覚悟は必要です。
日中サービス支援型は必要とされているし弊社含めて検討する運営事業者は多いと思いますが、なかなか普及しませんね。
<日中支援加算について>
土日は本来日勤者を置きますが、平日は皆さん作業所等へ通所されるので開設当初は日勤者を置きません。緊急の場合に平日24時時間支援する義務があるかというと、義務ではないが責任があると言えます。
元々日中は作業所等に通所している方が、やむ得ず休んで間断なく支援するなど一定の条件の下で区分4以上なら日中加算支援Ⅰが、3以下なら日中支援加算Ⅱが取得できます。(令和5年現在)
令和6年4月よりそれまでは3日目からだった加算が初日から算出できるようになり、かねてより指摘されていた矛盾がひとつ解消されました。
弊社の初年度の対象ご利用者は精神1級ながら区分3でしたから日中支援加算Ⅱでした(泣)。
見学時は特例子会社へ公共交通機関で自力通勤する方で、しかも元気だった(躁状態だった)ので甘く考えて入居契約をしてしまいました。ところがちょっとした些細なことがきっかけで入居開始1か月で重い鬱状態となり寝込んでしまいました。
さすがの1級です。通院先のドクターからの助言もあり、日中支援が必要となれば24時間間断なくスタッフを配置します。私も初年度は人手不足の正月にも朝から支援に入っていました。効率だけ考えていては成り立たないですね。
ここで痛い思いをしたため現在なら迷わず精神1級の方はお断りします。
ちなみに弱毒化した後の新型コロナ感染(全利用者感染)の時は、区分4以上の方は「よし、やっとⅠが算出できる」と心ひそかに思っていたら、国から通知が出ており障害区分に関わらずⅡしか算定できませんでした。(汗)
(➡しかし、コロナ禍で7日~10日ご利用者が平日の通所を全休して日中世話人配置しても黒字でした。それは行政からのコロナ助成金がしっかり出たからでした。そういう事業です。
例えば令和6年1月現在なら物価高騰支援補助金が出ます。何度も勝手に案内が来ます。ちゃんと貰ってくださいと繰り返し案内していただけます。他業種の一般事業会社ならほぼあり得ない支援です。この点は恵まれた業界だと思います。)
日中サービス支援型以外のグループホームは平日の日中は作業所や就労先へ行くことが前提です。人手不足でも日中世話人を配置するシフトが組めればまだ良いですが、やってみるとわかりますが、平日管理者やサビ管が日勤者として常時いない状況で日中支援加算Ⅱでご利用者1人を見るケースはまじめにやればやるほど採算割れします。
夜勤者を早めに来てもらい空白時間を少なくするとか、人件費の変わらない役員が日勤に入るとか工夫して回復を待つしかありません。こうなるとどこまで間断なく支援するかは運営者判断です。
(では休む方が複数なら採算が向上する・・という要素が出てきます。)
➡サビ管や管理者等日勤者が、平日一定数勤務している事業所なら損益分岐点がかなり下がり採算ベースに乗ります。実際平均区分が上がれば常勤換算も上がりますから日中配置の余裕が出てきます。そうすると日中支援も軌道にのります。運営の仕方を工夫して対策するしかありません。
開設当初日勤者を配置していない状況で、緊急時の日中支援の必要性について行政へ相談したところで最後は「お金ではない」と言われます。事業者は「採算が・・・」、 行政側 はこういう時に限り「採算の話はしていません・・」➡いわゆる福祉性×事業性 の中で行政からはこういう時は福祉性の話だけとなりますから、
株式会社などの営利法人であろうが社会福祉法人やNPO法人などの非営利法人であろうが事業者の責任と自覚で日中支援せざる得ません。
そういう覚悟のない方はこの事業をやるのは厳しいと言わざる得ません。
平日の長期に渡る日中支援は、日勤者がいない状況では発生しないに越したことはありませんが、よくよく考えて採算ベースにのる人員配置、障害区分設定を考えて運営するのが最大の防御かと考えます。区分高めの利用者に入居いただくなり定員数拡大をしていくと人員配置の工夫もしやすくなります。
グループホームは夜勤で稼ぐ構造なので、残念ながら日中支援に対しては現状あまり考慮されていません。
だから 部分最悪 < 全体最適 の発想で運営を考る必要があります。
右手に理念×左手に算盤 ➡福祉性×事業性 こういう事業です。
福祉性<事業性 をすべての面で期待するのではなく、全体最適に導くために部分最悪を乗り越える発想・工夫、やる気を持ちましょう。
定員が増えて複数棟あればサビ管はじめとして管理者等など平日日勤者が増えて来ます。
また障害区分が高い方が入居するか、区分変更に成功して区分が上がると常勤加算が少し上がりますので、工夫次第では日勤者を増やすことも出来ます。
弊事業所では現在はむしろ、日中支援加算対象者がいないにも関わらず、区分変更で区分がかなり上がったので、増えた常勤換算分をどこに配置するかに頭を悩ましています。だから現在なら通所を休む方の対応が以前よりはスムーズに組めます。今では上記はただのネタです。苦労は裏切らないと今だからこそ言えます。
大切な視点POINT1
入居審査は数回に渡り徹底的に!
大切な視点POINT2
部分最悪でも全体最適を目指す!
そのためには、制度を良く勉強して戦略が必要です。
高めの障害区分であれば常勤換算に余裕が出来るため、日中の人員配置可能で日中支援の問題はかなり解決します。シフトを組んだら一目瞭然です。
私は以前は開設メインのコンサルでしたから、法令面で日中支援加算のことは知っていても実際にどういう場面でそれが生じるか、人の動きや配置までイメージしていませんでした。
なので初年度はヒヤリングの甘さにより難易度の高い利用者が入居して、平日は日勤者(日中配置がない)がいない状態にも関わらず、ご利用者が就労先(特例子会社)を休まざる得ない状況となり寝込んでしまったため一定期間(4カ月)24時間支援を強いられました。
かつ元々日勤者を配置している休日は、他のご利用者に逆に毎週実家へ帰宅され収益的にも苦労しました。
そのような失敗を経て現在は避けるべきリスクはわかるようになりました。
これらの失敗を糧に現在は200項目のチェックリストのヒヤリングシートを作成して厳重な入居審査をします。その結果区分が高くても日中支援の必要のない方たちにご入居頂けました。
だから運営面は弊社でも、運営コンサルされている他の方でも良いから、きちんと失敗も経験して運営がわかる方にアドバイスを受けてください。綺麗ごとばかりでは苦労します。運営は本音のアドバイスが必要です。その方が結果として事業性も高まるし大幅な時間の短縮になります。
現状では制度が完ぺきとは言えず制度の漏れを「善意か責任感か正義感か・・」何かで埋めているのが現在の福祉業界です。より良い制度とするためには声を上げましょう。
(・・声が届いたのかどうかわかりませんが、上記の通り令和6年4月からの報酬改定でこの辺りの不備が議論され3日目➡初日から日中支援加算がつくよう改正されました。ここは運営事業者の嘆き所でしたから。)
事業者として正直な視点で記載していますが、常に経営の葛藤はあります。介護福祉業界でなくとも矛盾や不条理はたくさんあります。介護福祉業界だけが大変ではなくどんな業界でも同じだと思います。
適切な支援はご利用者の安定した生活へと繋がり、社会貢献度も高くやりがいも感じられます。
ご利用者様の安定はご家族の喜びでもあり、それが毎月のコミュニケーションで伝わってきます。
部分的なマイナス要素だけでなくそういう側面も考慮して全体最適で判断しましょう。